植物学研究者との共同研究によりピンセット操作の技能伝達用デバイスを開発しました。
ピンセットは、生物学をはじめとする様々な研究分野で重要な機能を果たすために使用されています。例えばゼニゴケを扱う研究室では、ピンセットで葉を切断する作業が行われていますが、挟む力のかけ方によって実験の成功率が変わることが知られています。しかし、ピンセットの先端にかかる力はほとんど感知できないため、専門家の指導のもとでピンセットの力加減を学ぶことは、初心者にとって必ずしも容易ではありませんでした。そこで私たちは、ピンセット先端部の拡大画像とともに、同時にピンセットが挟む力を測定可能なピンセット型デバイスとしてSkillPickerを提案します。熟練者はSkillPickerを使って自分の技術を記録することができ、これにより初心者は熟練者がいない場所でも練習することができます。SkillPickerには親指がピンセットをつまむ力を記録するための圧力センサーを備えており、親指が加えた圧力とピンセット先端が挟む力の間の対応を調べることで、ピンセットの先端に加えられたつまみ力の推定を可能にします。また、SkillPickerでは、圧力の値をグラフで可視化したり、音階に変換(可聴化)したりすることで、初学者にスキルの理解を促します。以上より、ピンセット操作の記録と共有が容易になり、初心者が視覚と身体で器用さの学習を容易にすることが期待されます。
成果
Noriyasu Obushi, Shohei Oshiro, Yusei Imai, Chikayoshi Matsudaira, Saku Kijima, Takehiko Kanazawa, Hirokazu Tsukaya, and Masahiko Inami. 2024. SkillPicker: Tweezers for Recording and Training Dexterous Operations. In ACM SIGGRAPH 2024 Emerging Technologies (SIGGRAPH ’24). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 18, 1–2. https://doi.org/10.1145/3641517.3664392
謝辞
本研究はJSPS科研費JP19H05670, JP19H05671, JP24H00710, JST SPRING Grant Number JPMJSP2140の助成を受けました。